2026年1月24日

証拠としての録音 - 改ざん検知を支える技術

音声録音は単なる議事録の素材ではありません。パワハラの証拠、契約交渉の記録、医療相談の内容確認──法的な証拠として扱われるケースが増えています。しかし「この録音は本当にその日に録られたものか?」という疑問に答えられなければ、証拠としての価値は大きく損なわれます。

ファイルの日時は簡単に改ざんできる

パソコンやスマートフォンに保存された音声ファイルには「更新日時」が記録されています。しかしこの情報は驚くほど簡単に書き換えられます。Macでは「touch -t 202301011200 file.m4a」というコマンド一つで任意の日時に変更できます。Windowsでも「ファイルのプロパティ」を編集するフリーソフトが多数存在し、BulkFileChanger、Attribute Changer、PowerShellのSet-ItemPropertyなどで数秒で改ざん可能です。

つまり、ファイルの「更新日時」を証拠として提出しても、相手方から「改ざんの可能性がある」と指摘されれば反論が困難です。裁判や調停の場では、より信頼性の高い日時情報が求められます。

コンテナに埋め込まれた録音時刻

MP4やM4A形式の音声ファイルには、ファイルシステムとは別に「コンテナ」と呼ばれる内部構造があります。この中のMOOV atomには、録音機器が書き込んだ作成日時(creation_time)が保存されています。iPhoneのボイスメモ、Androidの録音アプリ、ICレコーダーなど、多くの機器がこの情報を自動的に記録します。

Nikkeはこのコンテナ情報を解析し、可能な限り正確な録音日時を表示します。ファイルの更新日時ではなく、録音機器が記録した日時を優先することで、より信頼性の高い時刻情報を提供します。

なぜコンテナ改ざんは難しいのか

コンテナ内の日時を改ざんするには、バイナリエディタでファイルを直接編集するか、FFmpegなどの専門ツールで再エンコードする必要があります。しかし再エンコードすると音質が変化し、波形解析で検出可能です。バイナリ編集も、他のメタデータ(duration、サンプルレートなど)との整合性を保つ必要があり、専門知識なしには困難です。

一方、ファイルの更新日時の改ざんはtouchコマンド一発、マウス操作数回で完了します。この難易度の差が、証拠としての信頼性の差につながります。

Nikkeの3段階タイムスタンプ

Nikkeでは録音日時の信頼性を可視化するため、3段階の表示を採用しています。コンテナから取得できた場合は✓マーク、ファイルの更新日時からの推定は⚠マーク、アップロード日時のみの場合も⚠マークを表示します。これにより、その録音日時がどの程度信頼できるかを一目で判断できます。

Nikkeは裁判の証拠整理にも耐えうる文字起こしを目指しています。正確な書き起こしだけでなく、「いつ録音されたか」という情報の信頼性も、証拠としての価値を左右する重要な要素だからです。